排反、という表現は、普通数学でしか使われない。集合論において、集合Aと集合Bの要素が全く異なるときに、AとBは排反である、というのである。なんのこっちゃという感じだが、小学校の頃習ったであろうベン図を思い浮かべてもらいたい。ふたつの丸が完全に離れているのが「排反である状態」である。(画像はhttp://batmitzvah.blog136.fc2.com/blog-entry-691.htmlより引用。)
はい はん [0] 【背反・悖▼反】
( 名 ) スル
②
(引用ここまで)
やはり、なんのこっちゃという感じである。が、少なくとも②の意味は排反とカブるべくもない。問題は①の方だろう。
相反すること、相いれないこと、という言葉を聞くと、「矛盾」という言葉が思い浮かぶ。また、西国立志編の例が引かれているが、これは矛盾まで行かず「違う(たがう)」というほどの意味だろう。
難しい。まず、「違う」と「矛盾する」の違いを追求しなくてはならない。もうこの文章の時点で何がなんだかという感じだが、排反も集合論の概念であるし、せっかくだからここでも(エセ)集合論的に考えてみたいと思う。
違う(ちがう)、というのは、AとBに含まれる要素がひとつでも同じでなければよい。つまり、上の図のように円が完全に離れていなくても、円がちょっとでもずれていたり、あるいはひとつの円がもうひとつを含むような状態であれば、AとBは違う、と言える。
違う(たがう)にしても同じことで、たとえばAと言われてBをする、というときに、Aに加え余計なことをやったり、Aと言われたすべてをやらなかったりすれば、Aに違う、ということになるのである。
これに対し、矛盾はどうか。これもweblio辞書から引用したい。(以下引用)
む じゅん [0] 【矛盾】
( 名 ) スル
①
②
③
(引用終わり)
ここで取り上げられそうなのは③のアである。②がよくこうした文脈で使われる「矛盾」であるが、いかんせん定義があいまいであり、集合論的に定義しようがなさそうである。が、これについて言えることがあるとすれば、「A”と”Bが違う」という表現に対して、「A”かつ”Bは矛盾である」という表現になる、ということである。つまり、単にAとBというふたつをひとつずつ取り上げるのではなく、AとBが両立しているという想定のもと、両立することはありえない、ということを表現するのが「矛盾」ということばである、ということである。その点で「違う」ということばとも異なるし、「排反」とも異なる。というのは、「排反」の場合、「AとBとは完全に食い違う」ということが言いたいだけであり、「だからAとBは両立しない」ということまでを言おうとするものではないからである。
……、ふう、疲れた。
③のアもまた、上の図の状態ではない。上の図には、AとB、それに「AでもBでもない部分」があって、それらにより全体集合Uが形成されるように書かれている。③のアによると、「矛盾」とは「AかつノットA」であり、上の図で言う「AかつB」が、これでは矛盾とは呼べないことがわかるだろう。矛盾とは、「Aかつ(Bかつ「AでもBでもない部分」)」のことを指すのである。
しかし、相反するも相いれないも、(数学用語としてでなく)日本語として使っている場合あまりにも定義しづらい。もしこれらを「矛盾」と同一視してよいとすれば、「違う(たがう)」も「矛盾」も「排反」とは違うことがベン図から集合論的に示せたから、やったね!と言って終われる。
……、終わりたかったのだが、「二律背反」という言葉がラスボスとして立ちはだかるのである。
「二律背反」とは、正命題と反命題が同時に成り立つ、という現象を表す。その点で、単に「矛盾する」というのとは違うらしい。ふええ。
二律背反という言葉は、論理学の言葉であるがゆえに排反ともっとも紛らわしい位置にある。なおかつ、これまで懇切丁寧に説明してきた「矛盾」とも違うというのだから、新たな説明が必要になってしまうわけだ。
ここからは、あまりベン図は関係ない。しかし、視点は単純で済む。問題は、「”二律背反”のなにが”背反”なのか」という点である。
背反とは、文字どおりに見れば「そむくこと」である。だからこそ「違う」や「矛盾」の意味が出てくるのだが、ここで二律背反という言葉を展開してみると、「二律が(何かに)そむく」ということになるのである。さあ、なんだ。
二律背反とは、正命題と反命題が同時に成立することであった。これは、普通に考えておかしなことである。おかしなことなのに、成り立ってしまっている(これが二律背反と矛盾の違いでもあるのだが)。これは「自然の流れ」にそむいているのである。もっと正確に言えば、「論理的な自然さにそむいている」ということになる。だからこそ、二律背反の「背」は「背」でよいのである。
あ~、つかれた。なんか不首尾に終わってしまった気もするが、少しでも読者の皆様のお役に立てたら幸いである。
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